バンブーズブログ

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キッシンジャー氏の残したもの‼️

[社説]キッシンジャー外交の光と影
 
 
#社説 #オピニオン
2023/11/30 19:00
 
キッシンジャー氏はブッシュ大統領(写真㊧)ら歴代の米大統領外交政策を助言した=AP
冷戦期に米国務長官大統領補佐官(国家安全保障担当)を歴任したヘンリー・キッシンジャー氏が死去した。米外交を主導し、米中の和解やベトナム戦争終結に導く重要な役割を果たした。その功罪を冷静に分析することは、望ましい外交や国際関係のあり方を考えるうえで意味が大きい。

キッシンジャー外交を象徴するのが対中政策の大転換である。1971年に極秘訪中し、翌年のニクソン大統領の訪中と79年の米中国交正常化に道を開いた。

対立してきた共産主義陣営の中国への接近は中ソを分断し、ソ連との冷戦を優位に進める狙いがあった。ソ連とのデタント(緊張緩和)は、米ソ間で初の軍備管理条約の締結につながった。

底流には政治体制や価値観の相違にこだわらず、勢力の均衡をはかるリアリスト(現実主義者)としての考え方がある。こうした手法は大国同士の利害や関係の安定を優先し、民主主義や人権といった理念や周辺国への配慮を二の次にしがちな面もあった。

ウクライナ戦争の早期終結に向け、ロシアによるクリミア半島併合を容認するかのような発言をして物議を醸したのはその一例だ。

中国の発展を通じて国際秩序への取り込みを図ろうとした歴代米政権による「関与政策」の源流はキッシンジャー氏の訪中にある。そこには将来の民主化への期待も込められていた。中国の現状をみれば、その期待は大きく裏切られたと言わざるを得ない。

関与政策は中国の台頭を早め、結果として対立を強めた。対中強硬に軸足を移したトランプ前政権の方針をバイデン政権も踏襲する。キッシンジャー氏は政府の役職を退いた後も歴代の大統領に助言してきた。同氏の存在が米外交にどんな影響をもたらしてきたのかはなお検証が必要だろう。

キッシンジャー氏による対中政策の変更は同盟国の日本には寝耳に水だった。その教訓を日本は忘れず、あらゆる事態を想定した外交を心がけるべきだ。