バンブーズブログ

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[社説]EV化戦略に長期の視点を


 
 
#社説 #オピニオン
2024/1/4 2:00
 
米国でもEV推進策への反発が目立ち始めた
自動車産業で進むガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトに逆風が吹き始めた。主要市場の中国、欧州、米国で経済情勢や政策の動向が見通しにくい。自動車関連メーカーは長期視点に立った戦略が問われている。

EVが普及し始めた欧州での変調が顕著だ。2023年12月にドイツ政府がEVの購入時に支給していた補助金を停止した。新型コロナウイルス対策向け予算の転用に司法が待ったをかけたためだが、EV化を巡る欧州の動向は予断を許さない。

欧州連合EU)は35年にエンジン車の新車販売を禁止する予定だったが、一転して再生可能エネルギーでつくる合成燃料を使うならエンジン車の販売を認める方針を示した。フランスやイタリアが中国を含むアジア製EVに対する補助金を制限するなど、保護主義的な動きも見られる。

一方、世界最大の自動車市場でEV化が進む中国は、経済成長そのものに疑問符が付き始めた。追い上げを期す米国も、バイデン政権のEV政策に工場や販売店の労働者の反発が強い。11月の大統領選の行方にも左右されかねない。

こうした状況で日本の自動車大手に求められるのは、EVシフトのロードマップ作りだ。

EV化の歩調は地域やクルマの種類によって異なる。どこで、どんなクルマが、どの程度のスピードでEVとなっていくのか。その工程表を精査した上で着実に実行に移す必要がある。

トヨタ自動車はEV販売を30年に350万台にすると宣言した。ホンダも40年までにガソリン車から撤退する方針だ。トヨタは350万台に至る工程を段階的に開示しているが、クルマづくりに関わる部材やソフトウエアの企業が投資を進めるために、こうした指針は不可欠だ。

自動車の開発や生産には膨大な数の企業が関わる。EVの時代にも日本が競争力を保つために、自動車大手は関連企業と積極的にビジョンを共有してもらいたい。