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2024/1/10 2:00
紅海で日本郵船が運航する自動車運搬船を襲撃するフーシ派(フーシが公開した映像)=ロイター
紅海は欧米とアジアを結ぶ海上輸送の動脈である。航行が妨げられると、世界経済は甚大な影響を免れない。イエメンのイスラム教シーア派武装組織フーシによる商船への攻撃は断じて許されない。
フーシはパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスに連帯し、イスラエル関連船舶を標的にしていると主張する。攻撃は昨年11月以降、20回以上に及ぶ。弾道ミサイルや無人機、小型ボートなどを駆使する攻撃は重大な脅威だ。
世界の海上貿易の10〜15%が紅海を通過する。海運やエネルギー会社は紅海を避け、アフリカ南端の喜望峰回りに切り替えている。輸送に日数がかかり、運航コストが上がれば、物流の遅れや物価上昇を招きかねない。
国際社会は航行安全の確保へ結束が重要だ。米国は商船保護へ有志国による多国籍部隊を立ち上げた。10カ国以上が参加を表明しているという。欧州のコンテナ船を襲ったフーシとの交戦も起きた。
民間船舶を狙う卑劣な行為には断固とした対処が必要だ。ただし、ガザの衝突やフーシとの緊張が中東全体へ広がることは避けなければならない。ハマスとフーシはいずれもイランの支援を受けている。イランとの対立をあおるのでなく、事態の沈静化に向けた外交も尽くさなければならない。
フーシは日本郵船が運航する自動車運搬船を拿捕(だほ)した。日本もこの事態と無関係ではいられない。
日本政府は海上交通が脅かされる現状を憂慮しつつ、有志連合への自衛隊参加には慎重な立場だ。国家に準じる組織との戦闘や他国の武力行使との一体化は、憲法や現行法上の制約がある。諸外国の軍隊等への協力も、国連決議や停戦などを要件としている。
政府は昨年末の閣議で、アフリカ東部ジブチの海賊対処のための自衛隊拠点について邦人保護の機能を強化すると決めた。中東の緊張がさらに高まる場合に備え、自衛隊の活動や法的な枠組みの議論をしておく必要がある。