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企業は高い賃上げと改革で成長目指せ

[社説]企業は高い賃上げと改革で成長目指せ
 
 
#賃上げ2024 #社説
2024/1/17 2:00
 
経団連の十倉雅和会長は「昨年以上の熱量と決意をもって物価上昇に負けない賃金引き上げを目指す」と語る(9日、東京都千代田区)=共同
賃金を巡る春の労使交渉が始まる。30年間の停滞から脱し、日本経済が成長力を取り戻すための分岐点である。企業は高い賃上げで変革への決意を示してほしい。

経団連は16日、交渉の指針となる経営労働政策特別委員会(経労委)報告をまとめた。構造的な賃上げの実現が経団連と企業の責務だとして、昨年以上の積極的な検討を呼びかけた。基本給を引き上げるベースアップ(ベア)を有力な選択肢と位置づけ、若年層や非正規への重点配分も提案した。

賃金と物価の好循環を持続させるには、賃上げがまだ力不足だ。実質賃金は昨年11月まで20カ月連続で前年割れだ。日銀がマイナス金利政策を解除するうえで賃上げは最大の焦点になっている。

連合はベアで3%以上、定期昇給(定昇)と合わせて5%以上の賃上げ要求を目安として掲げる。この方針を経労委報告は「(労使の)検討・議論に資する」と異例の評価をした。今春の賃上げの重要性について労使の認識はほぼ一致しているといえる。

消費を下支えするためにも、定昇込みの賃上げは昨年実績の3.58%を上回る必要があるだろう。

サントリーホールディングスなど、昨年と同等以上の賃上げをすでに表明する企業もある。この流れを太くしたい。上場企業の手元資金は100兆円規模に膨らんでいる。円安などを背景に業績が好調な企業も多く、賃上げの余力は十分にある。

人手不足が深刻になっており、優秀な人材の確保には他社を出し抜く賃上げも重要になる。国際競争力の観点からも日本の賃金水準の引き上げは不可欠だ。

重要なのは賃上げを起点に経営改革に踏み出すことだ。成長領域へ思い切った投資をし、人件費の上昇に耐えられない事業は撤退も視野に見直す。省人化などで生産性の向上を徹底的に進め、多少割高でも売れる付加価値のある製品を生み出すことが重要だ。

コスト削減を最優先し、人件費を抑制する縮小均衡の経営に戻れば成長はさらに遠のく。改革を通じて賃上げ原資を生み出す新たな成長サイクルを回すべきだ。

岸田文雄首相は昨年を上回る賃上げを産業界に訴えているが、賃金の決定は本来は民間に委ねるべきだ。産業の新陳代謝と成長分野への労働移動を促す改革こそが、持続的な賃上げに向けた政府の果たすべき役割である。