バンブーズブログ

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[社説]バイオ後続医薬品の普及急げ


 
 
#社説 #オピニオン
2024/1/21 19:00
 
遺伝子組み換え技術などを使ったバイオ医薬品が薬の主流になりつつある(がん治療薬のオプジーボ
バイオテクノロジーによってつくられたバイオ医薬品が医薬品の主流になりつつある。効果が大きい一方で高額な薬が多く、薬剤費が大きく膨らむ懸念がある。価格が割安なバイオ後続品(バイオシミラー)の普及を急ぐべきだ。

バイオ医薬品は、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術を使って製造したたんぱく質を有効成分とする。治療薬がなかった病気や、満足な治療ができなかった病気への効果が期待されている。世界の医薬品売上高の4割を占める規模になっており、日本市場も1兆円を超えて成長を続けている。

ただバイオ医薬品は高額になりがちだ。原材料が高価で細胞の培養などに大きな設備が要る。製造工程も複雑だ。このため保険償還価格である薬価が1人分で年3000万円を超えた薬もある。

このまま市場が広がり続ければ、高齢化で膨らむ薬剤費を一段と拡大させ、医療保険料などの国民負担が増える要因になる。そろそろ対策に本腰を入れるべきだ。

低分子化合物による従来の薬は特許が切れた先発薬を割安な後発薬に置き換えて薬剤費の抑制につなげている。バイオ医薬品も同様の取り組みを進めてほしい。

バイオ後続品は先発品と同一ではない類似品だが、同等の有効性や安全性が証明され、薬価は先発品の7割に抑えられる。だが日本の後続品市場は1000億円程度とバイオ医薬品全体の1割未満にとどまっているもようだ。

後発薬は患者が負担する薬代が先発薬よりも割安になる点が、医薬品全体に占める品目シェアを8割に高める原動力になった。

ところが高額なバイオ医薬品では患者のインセンティブが働かない。医療費の患者負担に月額上限を定めた高額療養費制度が適用されるので、後続品を選んでも患者負担に差が生じないためだ。

後続品があるバイオ医薬品を使う患者には月額上限を超えたら一定の追加負担を求めるなど、患者が後続品を使うメリットを感じられるようにする工夫が要る。