バンブーズブログ

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[社説]深まるミャンマーの人道危機


 
 
#ミャンマークーデター # ASEAN #東南アジア
2024/2/2 19:00
 
ミャンマーからの避難民は劣悪な暮らしを強いられている(2023年11月、インド北東部の国境地帯)=ロイター
ミャンマーの軍事クーデターから3年がすぎた。強権支配を続ける国軍と、民主派と少数民族が連携する反軍勢力との武力衝突が激しさを増す。容易には出口が見つからないなか、深まる人道危機への対応を急ぐ必要がある。

国軍は2021年2月1日にアウンサンスーチー氏ら文民政権の幹部を拘束し、全権掌握を宣言した。抗議する市民の弾圧を続け、人権団体によれば約4500人を殺害し、なお2万人を拘束中だ。

支配に綻びも生じている。昨年10月以降、反軍勢力は国軍への攻撃を本格化させ、地方の拠点を次々と奪った。士気低下が指摘される国軍は空爆などで応戦する。

戦闘で居住地を追われる人々が続出した。国連によると避難民は人口の5%近い250万人に達し、国境地帯で劣悪な暮らしを強いられる。国際的な支援は届かず、生活物資の不足が深刻という。

国の平和と安定を破壊した責任が、民主主義を踏みにじった国軍にあるのは言うまでもない。だが少数民族は勢力圏の拡大を優先し、また民主派の一部が不透明な徴税を批判されるなど、反軍勢力も統制を欠く。混乱のしわ寄せを受けるのは一般市民だ。

国際社会は有効な手を打てない。米欧の制裁は効果に乏しく、国軍とのパイプを期待された日本も存在感が薄い。隣国へ影響力拡大をもくろむ中国は一時停戦を仲介するが、戦闘がやむ気配はない。

東南アジア諸国連合ASEAN)も機能不全だったが、1月末に開いた外相会議にはミャンマーから外務省高官が参加し、人道支援について議論した。ASEANは国軍が任命した外相を締め出し、「非政治的な代表」の派遣を求めてきた。かたくなに拒んできた国軍が一転して歩み寄った。

孤立を避けたい国軍に都合よく利用される事態は避けなければいけないが、対話の糸口にはなる。また避難民へ支援を届けるには、反軍勢力との協力も不可欠だ。日本を含む国際社会は、ASEANの取り組みを後押しすべきだ。