バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]農水産物の輸出先を多様化しよう


 
 
#社説 #オピニオン
2024/2/6 19:05
 
ホタテは中国以外の輸出先の確保が課題になっている
2023年の農林水産物・食品の輸出額は中国による日本の水産物の禁輸にもかかわらず、米国向けなどが好調で過去最高を更新した。輸出の相手先と農産品の幅を広げていく努力の大切さが鮮明になっている。

過去最高の更新は11年連続だ。ただ前年比の伸び率は2.9%で、22年の14%と比べると鈍化した。東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出で、最大の輸出先の中国が水産物の輸入を停止したことが響いた。

中国向けの輸出が増えていたホタテを中心に深刻な影響が出ている。政府は科学的な根拠をもとに輸入の再開を中国に働きかける必要がある。ただ併せて進めるべきなのは、新たな市場の開拓だ。

ホタテの輸出ルートの変化が対応策を示唆している。これまでは中国で加工した後、最終消費地である米国に一部が再輸出されていた。中国の禁輸でこのやり方は難しくなったことで、米国に直接輸出する量が増えた。

ベトナムなどに中国に代わる加工拠点を確保したうえで、米国に販売する新たなルートを設ける取り組みもすでに始まっている。この流れを軌道に乗せるため、官民の連携による各国での加工拠点の整備を急いでほしい。

米国への輸出に関しては、他の農産品にも前向きな動きがある。23年に前年比で33%増えた緑茶は、米国向けがけん引した。健康志向の高まりを受け、粉末状に加工した緑茶のニーズが増えている。コメの輸出も堅調だ。

日本との関係改善がプラスに働いて、韓国へのビールの輸出も増えた。ビールの需要増は、原料である国産大麦の生産にとって追い風になる。韓国からの訪日客も増えており、観光消費が食品輸出を促す好循環が期待される。

中国は引き続き重要な輸出相手だが、市場の大きさに引かれて依存度をこれ以上高め続けることはリスクを伴う。輸出額が23年に大きく増えた香港も、中国の影響で輸出に突然ブレーキがかかることへの懸念がくすぶる。

1次産業は人口減少と高齢化による国内市場の縮小に直面している。輸出で海外に活路を求める重要性はますます高まる。

東南アジアの富裕層や中間層など有望な市場はたくさんある。現地のニーズを官民できめ細かく分析し、バランスよく輸出先を広げる努力が欠かせない。