バンブーズブログ

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トランプ前米大統領のNATO発言を憂う

[社説]トランプ前米大統領NATO発言を憂う
 
 
#社説 #オピニオン
2024/2/13 19:00
 
トランプ前米大統領は在職中もNATOを軽視する発言が目立った=AP
北大西洋条約機構NATO)の加盟国が国防費を十分に負担していなければ、ロシアによる攻撃を容認するかのようにトランプ前米大統領が発言した。NATOの信頼性を傷つけ、ロシアを利する言辞だ。決して看過できない。

トランプ氏は支持者集会で、大統領に在任中だったときに出席したNATO会合のエピソードを紹介。ある欧州の首脳から国防費の負担目標を達成していなくても、その国がロシアから攻撃されたら米国が守るかどうかを問われ「守らない」と返答したと明かした。

「むしろ何でも好きにしてよいと彼ら(ロシア)をけしかける」とも言明した。11月の大統領選で共和党候補に最有力視されるトランプ氏は、米国に財政負担が集中し過ぎているとしてNATO脱退をほのめかしたことがある。

NATO旧ソ連に対抗する軍事同盟として冷戦期に発足した。その根幹となるのは北大西洋条約第5条で、いずれかの加盟国への攻撃にその他の加盟国が集団的自衛権を行使して反撃する集団防衛を定める。トランプ氏の発言はこれをないがしろにするものだ。

ロシアのウクライナ侵攻でNATOの重要性は増した。だからこそフィンランドスウェーデンが加盟を求めた。NATOのストルテンベルグ事務総長が「すべての加盟国の安全保障を損なう」と懸念を示したのは当然だ。

NATOは2014年、加盟国の国防費を国内総生産GDP)比で2%以上に引き上げる目標を24年までに達成するよう加盟国に要請した。推計では31の加盟国で実現したのは米英や、ロシアに近いバルト3国など23年は11カ国にとどまっている。ドイツやフランスは未達だ。

世界の守りをもはや米国だけに頼るわけにいかない。加盟国は2%目標の早期達成が望ましい。

中国は同盟国を軽んじるトランプ氏の発言を注視しているに違いない。日本も防衛力強化を含めた自助努力が重要なのは言うまでもない。