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2024/2/20 2:00
中国は「スパイ摘発」を強化している=ロイター
いまのままでは中国への投資をためらう企業や人は増え続けるだろう。習近平政権は外資の中国離れを深刻に受け止めるべきだ。
中国政府が発表した2023年の国際収支によると、対中直接投資額は330億ドル(約5兆円)の流入超だった。前の年に比べ8割減り、ピークだった21年の1割弱にすぎない。
1989年の天安門事件で外資の対中投資が止まり、鄧小平氏が92年の「南巡講話」で改革開放の加速を呼びかけたころに匹敵する低い水準だ。
工場の建設といった新規の投資が細る一方、中国事業の縮小や撤退も目に付くようになってきた。外資を取り込んで経済の質を高める改革開放の成長モデルが、大きな転機を迎えている。
中国経済は深刻な不動産不況を起点に需要不足が続く。1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月に比べ0.8%下落し、4カ月連続のマイナスとなった。本格的なデフレに突入する瀬戸際にあるといっていい。
にもかかわらず、習政権の動きは鈍い。景気の悪化を食い止める有効な対策を打ち出せずにいるだけではない。国有企業ばかりを優遇して民業を圧迫する「国進民退」を露骨に進めている。
11月の米大統領選でだれが当選しても、米国の厳しい対中姿勢が変わる見込みはない。半導体をはじめ最先端の技術が漏れるのを防ぐため、中国とのビジネスにはこれまで以上にさまざまな制約がかかる公算が大きい。
こうした状況下で外資が対中投資に二の足を踏むのは当然だ。それに輪をかけるように、習政権が「スパイ摘発」の強化に動いているのは理解に苦しむ。
昨年7月に反スパイ法を改正し、何がスパイ行為にあたるかは一段とあいまいになった。いつどんな理由で拘束されるかわからず、中国で安心してビジネスができる環境ではなくなっている。
特に市場分析を手がける調査会社への締めつけを強めているのが気がかりだ。巨額の資金を投じる前に市場を調査するのは当たり前で、それがスパイ行為にあたるのであれば外資は対中投資に踏み切れるわけがない。
習政権は経済の立て直しより、共産党による一党支配の強化を優先しているようにしかみえない。それを変えない限り、外資の中国離れに歯止めはかからない。