[社説]「恒大問題」の先送りはもう許されない
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2024/1/29 19:05
経営危機に陥った中国恒大集団の拠点(広州市)
苦境にある中国経済への不安は少しも払拭されていない。習近平政権は深刻な経営危機に陥った不動産大手、中国恒大集団の抜本的な処理を急ぐべきだ。
香港の高等法院(高裁)が29日の審理で、恒大に「清算命令」を出した。海外債権者の申し立てを認め、法的整理の手続きに入るよう命じる決定である。
恒大の経営危機が2021年夏に表面化してから、すでに2年半がたつ。問題を先送りしているうちに、危機はいっそう深まった。23年6月末の時点で恒大の債務超過額は6442億元(約13兆円)に膨らんだ。
今回の香港高等法院の決定も、たび重なる延期の末にようやく導き出した結論だ。恒大が実質的に破綻している現状を考えれば、遅きに失したとの批判は免れない。
法的整理には険しい道のりが待ち受ける。
恒大は裁判所が任命する管財人のもとで債務を整理する。ただ、恒大の資産はほとんどが中国本土にあり、処分するには本土側の裁判所に申請して許可を得なければならない。
中国政府は法的整理に慎重な姿勢を取り続けている。代金を先払いしたのに住宅の引き渡しを受けていない個人をはじめ、幅広い取引先に影響が及ぶからだ。社会不安をおそれる習政権は、関係者に痛みを強いる措置の発動をためらっている。
さらなる問題の先送りは中国経済の傷を深くするだけでなく、世界経済の足も引っ張りかねない。習政権は必要に応じて公的資金の投入も視野に入れるべきだ。
中国では株式相場の低迷が長引いている。
背景には、恒大問題が象徴する不動産市場の不振がある。当局は借りた株を売却して利益を得る「空売り」の制限に乗り出したが、市場の自由な取引をむやみに取り締まるやり方は株価の回復につながらない。
気になるのは中国でスパイ摘発を担当する国家安全省の動きだ。市場関係者の間では、同省が一部の空売りは金融不安を引き起こす狙いがあるとして、スパイ行為に認定するのではないかとの懸念が広がっている。
習政権は株安の根っこにある問題を直視し、小手先でない構造改革に取り組むべきだ。投資家の自由を締め付ける行為は、逆効果になるだけである