バンブーズブログ

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日本企業が変身することへの期待

[社説]企業は価値向上策を市場に訴え実行を
 
 
#日経平均史上最高値 #株主総会 #社説
2024/3/29 19:05
 
日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新した背景には、日本企業が変身することへの期待がある(2月22日、東京都中央区
経営が破綻すれば甚大な損失を被る株主に対し、企業は株価上昇や配当・自社株買いなどを通じてリスクに見合う高いリターンを実現しなければならない。そんな考えに基づいて、東京証券取引所が上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」を要請し3月末で丸1年だ。

東証の要請を受けて成長戦略や株主還元を発表する企業が増え、日本の株式市場への再評価は進んだ。日経平均株価が史上最高値を更新した背景にも、日本企業の変身への期待がある。この流れをさらに速く太いものにして経済の活性化につなげたい。企業が具体的な価値向上策を市場に示し、着実に実行するよう求める。

本紙集計によれば、上場企業の配当と自社株買いによる株主還元総額は、2024年3月期に約25兆円と2年連続で過去最高となる見通しだ。また、日東電工がすべての政策保有株の売却を完了したと発表したように、明確な目的もなく保有する株式資産を見直す動きも加速してきた。

積極還元や政策保有株見直しは、資産効率の向上につながることが多いため、株主からの評価も高い。企業は株主重視の経営を、東証に促されたうえでの対応ではなく、主体的な取り組みとしてさらに深めてほしい。

公表されている「資本コストや株価を意識した経営」に向けての改善策は、株主還元に比重が置かれたものが多く見受けられる。株価が帳簿上の解散価値を下回る「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」対応も目立つ。

もちろん、こうした対策も株主重視の経営に欠かせない。しかし、目先の株価や指標の改善に拘泥すると将来の成長の種まきがおろそかになりかねない。中長期の視点での株式市場の評価も高めることが難しくなる。

公表済みの改善策は成長投資などが掲げられているが、中身が曖昧な例が少なくない。今後は成長戦略を練り、具体的な投資分野を示すべきだ。たとえば東洋製缶グループホールディングスは「車載用2次電池用部材」などへの増強投資を明示している。

こうした市場へのコミットメントの進捗を、投資家は目を凝らして見ている。実現が疑わしくなれば、経営者の信任も揺らぐ。企業は株主総会などの場で、例年にも増して強い緊張感を持って株主との対話に臨んでもらいたい。