バンブーズブログ

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新入社員の意欲と挑戦引き出す企業に

[社説]新入社員の意欲と挑戦引き出す企業に
 
 
#社説 #オピニオン
2024/3/31 19:05
 
新入社員の飛躍が日本経済の転換を支えてゆく(2023年4月、JALグループの入社式)
新年度が始まる4月1日、新社会人を迎え入れる職場も多いだろう。物価や賃金、株価が上昇し、日本経済は停滞から成長に向かう転換点にある。将来を担う若い人材に活躍してもらうために、企業自身も変わるときだ。

今年の新入社員は「Z世代」と呼ばれ、昭和世代とは価値観が異なる。柔軟な働き方を志向し、自己の成長につながる仕事かどうかを重視する。転職にも前向きだ。

産業界では初任給を30万円台まで引き上げる動きもあるが、賃金だけでは人材をつなぎ留めるには不十分だろう。成長できる機会を提供し、多少の失敗は許容して再挑戦を促す社内風土が重要になる。過保護にならず、時には厳しく教育する姿勢も必要だ。

年功序列の人事・賃金制度は抜本的に見直さなければならない。スタートアップに転職する若者が多いのも、責任ある仕事に早く就きたいと考えるからだ。NTTグループは2023年4月、昇給・昇格で入社年次の要件を撤廃し、20代でも管理職になれるようにした。他社も改革を進めたい。

新規プロジェクトへの若手の積極登用や、勤務時間の一部を他部署で働く「社内副業」など成長を後押しする工夫はいろいろ考えられる。若手の柔軟な発想や行動力は、均質で保守的になりがちな組織を活性化する効果もある。

テレワークや勤務地の限定などを認めるのも重要だ。学生時代の大半を新型コロナウイルス下で過ごし、リモート環境を使いこなせる世代でもある。働き方やキャリアを主体的に選べなければ、若手に限らず人材は集まらない。

米ギャラップの22年の調査によると、仕事への熱意や職場への愛着を示す社員は日本には5%しかおらず、世界平均の23%を大きく下回る。働きがい(エンゲージメント)の向上は多くの日本企業が直面する課題だ。

社員のエンゲージメントスコアを開示したり、役員報酬と連動させたりする企業もある。丸井グループは社内公募制を積極的に活用し、研修費などの人的投資は有形資産への投資以上のリターンを生むと公表している。

会社の評判はネット上で拡散され、社員と元社員が書き込む口コミサイトには学生や転職希望者が注目する。働き手に選ばれるためにも、企業は人材を付加価値の源泉と見なす「人的資本経営」を着実に進化させていくべきだ。