バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]外国人が長期就労しやすい制度に整えよ


 
 
#社説 #オピニオン
2024/2/10 2:00
 
政府は関係閣僚会議で技能実習に代わる新制度の方針を決めた(9日午前、首相官邸
政府が外国人労働者の受け入れで、技能実習制度に代わる新制度の方針を決めた。技能実習は賃金不払いなどトラブルが多く、かねて問題点を指摘されてきた。今度こそ外国人が安心して長く働ける制度に整えなければならない。

新制度の「育成就労」は3年間の就労を基本とし、技能レベルが高い別の在留資格「特定技能」に移れるよう育成する。昨年秋の有識者会議の報告書をもとに政府が対応方針をまとめ、9日の関係閣僚会議で決定した。今国会に関連法案を提出する予定だ。

転職を制限する期間は就労後1年間を目指すとしつつも、当分の間は業種ごとに1年から2年の間で設定できるようにした。都市部への人材流出を懸念する自民党の主張を一部反映した。転職の条件となる日本語能力の水準も引き上げており、有識者会議の提言から後退したことには疑問が残る。

技能実習は転職が原則できないことで多くの失踪者を生んできた。「当分の間」としている経過措置の年数を明示し、期間もできるだけ短くするべきだ。

外国人の受け入れ窓口となる監理団体は企業と癒着するケースがある。独立性と中立性を保つため外部監査人の設置を義務付けるのは妥当だ。監理団体に許可を与える要件も厳しくするというが、実効性のある基準が要る。

新制度は人材育成に力点を置き、試験を課すことで日本語能力や技能の段階的な向上を目指す。学ぶ機会を十分に提供し、賃金を含めた待遇改善を進めるのは企業の責務だ。各社の取り組みをチェックする仕組みも必要になる。

政府は「特定技能」の対象分野に自動車運送業林業などを追加することも検討している。いずれも人手不足が深刻な業種であり、外国人の受け入れは必要だ。

日本で働く外国人はすでに200万人を超えた。長く活躍してもらうには生活基盤の安定が欠かせないが、支援体制は十分とは言えない。日本語教室の拡充や不就学児童への対応など、課題は山積する。外国人と共生する地域社会の構築を進めなければならない。

新興国は経済成長が進み、賃金面では日本で働くメリットは今後薄れていく。韓国や台湾などとの人材獲得競争も激しい。「選ばれる国」を目指すなら、新制度の創設を機に受け入れ体制の不備を洗い出し、政府が先頭に立って改革を急ぐべきだ。