バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

単身高齢者を支える社会への基礎づくり

[社説]単身高齢者を支える社会の基盤づくりを
 
 
#社説 #オピニオン
2024/4/19 2:00
 
自分らしく暮らせる土台を整えたい
家族の「縮小」が止まらない。国の推計では1世帯あたりの平均人員は2033年に1.99人と初めて2人を割り込む見通しだ。とりわけ一人暮らしの高齢者の増加が目立つ。孤立・困窮を防ぐ仕組みづくりが急務だ。

世帯人員は20年には2.21人だった。単独世帯は50年には2330万世帯(全世帯の44.3%)となり、うち65歳以上が1084万世帯を占める。大きな要因は未婚率の上昇であり、いざというときに頼れる近親者がいない人の急増が予想される。

注意したいのは、これから高齢者になる人たちは若い時期が就職氷河期に重なり、非正規などで十分な収入がなかった人が少なくないことだ。低収入・低年金による貧困を食い止めるには、まずは長く働ける施策が必要だ。賃金の男女格差の是正も欠かせない。

家族のサポートを前提にしたものは多岐にわたる。日々の見守りや生活支援、財産管理、死後の対応などだ。どのような支援が必要なのか。官・民・地域でそれぞれどう担うのか。政府が音頭を取って整理・推進するとともに、自治体は相談窓口を設けて実情に合わせて対応してほしい。もちろん、介護サービスの充実も図らなければならない。

住まい確保にも力を入れる必要がある。高齢者は孤独死した場合の対応や家賃滞納などトラブルへの懸念から、賃貸住宅への入居を家主から拒まれるケースが多い。

政府は高齢者が入居できる賃貸住宅を増やすため、今の通常国会で法改正を目指している。高齢者が滞納した家賃を立て替える保証業者の認定制度をつくるほか、身寄りのない高齢者が死亡した後に残る遺留品を、本人から事前に委託を受けた支援法人が処分できるようにする。大家が安心して住宅を貸し出せるようにする狙いだ。

一定の前進ではあるが、これで住まいを十分に確保できるかどうかは不透明だ。全国で800万戸を超す空き家を改修して高齢者の見守り機能がある公営住宅に衣替えするなどの施策を求める識者もいる。世帯構成や住宅ニーズの変化を見据え、住宅政策のあり方を点検してほしい。

地域とのつながり、さまざまな人との交流は、高齢期の暮らしを豊かにする。自ら工夫するとともに、もしもに備えて早くから自らの情報や意向をまとめておくのも大切になる。