バンブーズブログ

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世界が不安を覚えた《米大統領選の討論会》

[社説]世界が不安を覚えた米大統領選の討論会
 
 
#社説 #オピニオン
2024/6/28 19:05
 
米大統領選の討論会は2人の候補が中傷合戦を繰り広げた=AP
その指導力がかつてなく必要とされているにもかかわらず、不安を感じる有権者が多かったのではないか。2人の米大統領候補が直接対決した討論会のことである。

81歳と現職の大統領で最高齢のバイデン氏はしわがれ声と言いよどみが目立ち、精彩を欠いた。政府債務に関する質問では、回答が要領を得ない場面もあった。

民主党内にくすぶる高齢への懸念をぬぐうどころか、深める結果となったのは間違いない。党候補として正式に指名を得る8月の党大会を前に、勇退を求める意見が再燃する兆しもある。

トランプ前大統領は質問をはぐらかし、虚偽を織り交ぜた主張を一方的にまくし立てた。選挙結果を受け入れるかを問われた場面が典型だ。「バイデン氏は私たちを第3次世界大戦に近づけている」などと話題をそらし、さらに2回聞かれてようやく「合法的で公平なら受け入れる」と答えた。こうした手法は有権者を誤った判断に導きかねず、問題がある。

4年前はトランプ氏がバイデン氏の発言を幾度も遮り、罵るなどして「史上最低の討論会」と米メディアに酷評された。今回は相手の発言中はマイクの音声を切る措置がとられたこともあり、大きな混乱はなく進行した。もっとも、双方が「史上最悪の大統領」と罵り合うなど、中傷合戦は変わらなかったのは残念だ。

論戦に不安を覚えたのは米国の有権者だけではない。国際情勢が不安定さを増すなかで、超大国のリーダーがどう振る舞うかは世界の大きな関心事である。

トランプ氏は「就任前にロシアとウクライナを停戦させる」と豪語したが、その道筋は定かではない。加盟国が適切な国防費を負担しない限り、北大西洋条約機構NATO)を支持しないとの持論も改めて展開した。NATOの結束を弱め、ロシアを勢いづかせかねない発言は慎むべきだ。

バイデン氏はパレスチナ自治区ガザの衝突に関し、自身が提案した停戦案の重要性を訴えた。もっとも、それをどう実現させるか説得力のある説明は乏しい。私たちが聞きたいのは、世界の安定に資する力強い言葉と処方箋である。

各種の世論調査で投票先を決めていない有権者は2割いる。CNNの調査では、討論会でトランプ氏が勝利したとの回答は67%、バイデン氏は33%だった。その影響を注視する必要がある。