バンブーズブログ

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[社説]陸自ヘリ事故の原因究明急げ


 
 
#社説
2023/4/20 2:00
現場海域近くで捜索に向かう自衛隊員(17日)=共同
陸上自衛隊のヘリコプターが沖縄県宮古島付近で行方不明となった事故は、発生から2週間たったいまも原因がはっきりしない。行方不明者の捜索とともに、原因究明を急がねばならない。

ヘリには第8師団長の坂本雄一陸将や師団幹部ら10人が搭乗し、偵察任務にあたっていた。6日午後に宮古島分屯基地を離陸し、10分後に同島北西の洋上でレーダーから機影が消えたという。

これまでに搭乗員とみられる複数の死者が確認された。陸自事故調査委員会を立ち上げたが、現時点で原因特定につながりそうな情報は少ない。

レーダーから消失する2分前の交信では異常は伝えられていなかった。この間に突発的なトラブルに見舞われた可能性が高い。3月下旬に点検した際は機体に問題は見つからず、当日の天候も良好だったという。自衛隊関係者も首をかしげている。

カギを握るのは機体の損傷状態やフライトレコーダー(飛行記録装置)だ。現場海域は海底の地形や海流が複雑で水深も深いという。二次被害に注意しつつ、捜索と回収に全力をあげてほしい。

航空機の事故は一般市民に被害が及ぶ可能性もある。事故が起きた多用途ヘリ「UH60JA」は部隊の輸送や災害派遣に広く使われている。

原因が分からないままでは、自衛隊員だけでなく国民の不安も大きいだろう。原因究明と併せて丁寧な情報開示が求められる。

宮古島尖閣諸島を含む南西諸島は海洋進出を強める中国と向き合い、台湾有事の際には戦域に入る可能性が高い。

この地域の防衛体制整備は岸田文雄政権が進める防衛力の抜本的強化の象徴であり、防衛省は相次いで防衛拠点を築く「南西シフト」を進めてきた。第8師団もその一翼を担う。

日本を取り巻く安全保障環境が険しさを増すなか、事故によって防衛網に隙をつくらないよう万全を期すことも政府の責務である。