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遺族の夫「終わったよと伝えたい」 池袋暴走、元院長に賠償命令


 
配信 2023年10月27日 17:14更新 2023年10月27日 18:51
毎日新聞毎日新聞社

 東京・池袋で2019年4月、松永真菜さん(当時31歳)と長女莉子ちゃん(同3歳)が乗用車にはねられ死亡した事故で、遺族の松永拓也さん(37)らが、自動車運転処罰法違反で有罪が確定した旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三受刑者(92)に約1億7000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は27日、飯塚受刑者に約1億4660万円の賠償を命じた。平山馨裁判長は、飯塚受刑者が「自動車運転上の最も基本的な注意義務に違反した」と認めた。

 飯塚受刑者の過失の程度が争点だった。判決は、飯塚受刑者がアクセルとブレーキを踏み間違えて落ち度のない2人を巻き込んだとし「過失は一方的で重大」と指摘。飯塚受刑者は、運転を必要最小限にするよう医師から指導されていたにもかかわらず「食事に行くという目的のため安易に運転した。遺族が憤るのも無理はない」と批判した。

 
 判決は、飯塚受刑者が刑事裁判で「車に異常があった」と訴えたことに「相応の証拠が出そろっても過失を認めず、刑事裁判の判決が出るまで不合理な弁解を続けた」と言及。無罪を主張する権利を踏まえても「遺族の心情を逆なでした」と指摘し、こうした点も考慮して賠償額を算定した。

 判決後の記者会見で拓也さんは「帰宅したら『終わったよ』と伝えたい。2人のことは忘れないし、もう一度抱きしめたいが、それはかなわない。せめて2人の命が無駄にならないように前を向いて生きていきたい」と話した。今後、交通事故防止や被害者支援に向けた活動を続けるという。

 訴訟は拓也さんら遺族9人が20年10月に提起した。判決は拓也さんや真菜さんの父親ら計4人への賠償を飯塚受刑者に命じる一方、真菜さんのきょうだいら5人の請求は棄却した。拓也さんは「きょうだいは結婚するまで同居し、互いに愛していた。金額の問題ではなく、きょうだいの気持ちを思うと心が痛い」と述べた。【斎藤文太郎】