バンブーズブログ

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[社説]インド月着陸成功に学びたい


 
 
#社説 #オピニオン
2023/8/25 2:00
 
月探査機「チャンドラヤーン3号」が月の南極付近に着陸し、喜ぶインド宇宙研究機構(ISRO)関係者ら(ISROのライブ配信ユーチューブから)
インドの無人探査機「チャンドラヤーン3号」が月着陸に成功した。旧ソ連、米国、中国に次ぐ4カ国目で、平らな地形が少なく着陸が難しいとされる南極付近の成功は初めてとなる。インドの宇宙技術の水準の高さを示すものだ。

ロシアの探査機が先行して南極付近に挑んだが、着陸態勢に入る前に制御不能となって失敗した。宇宙開発の主役交代が始まったと感じさせる出来事といえよう。

インドの宇宙関連予算は年間二千数百億円で、日米欧中に比べると大幅に少ない。様々な工夫で補っており、見習うべき点も多い。

徹底した低コスト設計を進め、チャンドラヤーンの開発費は7500万ドル(約110億円)ほどで済んだ。日本の月探査機「SLIM」の約150億円より少ない。

ロケットで打ち上げた後まず、地球を回る軌道に入る。エンジンを噴射しながら地球の重力を使って加速し、徐々に遠ざかって月へ向かった。時間はかかるものの、少ない燃料で済ませるためだ。

月へ運搬した観測機や探査車も稼働し始めた。約2週間かけて、地震活動や地質などを調べる計画だ。月の南極付近には、飛行士の飲料水やロケットの燃料に利用できる水のもとになる氷が存在するとみられる。

日印は月の水資源を本格的に調べる計画を進めており、今回の探査の成功で弾みがつく。さらに推進するためにも、日本が27日に予定するSLIMの打ち上げを成功させてほしい。

「宇宙強国」への野心を隠さない中国は欧米との対立を深めている。インドには、人工衛星を開発し、ロケットで打ち上げて月や惑星まで運ぶ能力がある。今後、存在感を増していくだろう。日本にとってインドとの協力は欧米との連携と同じくらい意味を持つ。

様々な国や企業が月を目指す動きが活発になっている。一方で、資源利用に関する実効性のあるルールがない。宇宙開発を進める国々はむやみな争いを防ぐために、話し合う必要がある。