バンブーズブログ

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[社説]市販薬の乱用はマイナンバーで防げ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/17 2:00
 
処方箋がいらない市販薬を大量摂取して救急搬送される若者が増えている
解熱剤、せき止め薬といった市販薬を大量に摂取することで薬物中毒になる若者が増えている。厚生労働省はこの問題への対策として、乱用の恐れがある薬のインターネット販売を禁止する議論を進めているが、マイナンバーの活用こそが対策には有効だ。

厚労省エフェドリンなど6つの成分を含む市販薬を「乱用等の恐れがある医薬品」に指定。ドラッグストアなどが子どもに販売する際、氏名や年齢、使用状況を確認し、2箱以上購入する人には理由を聞くよう求めている。そのうえで支障がないと判断した場合にだけ販売するようにしている。

だが2015年ごろから大量服薬で救急搬送される若者が増え始めた。20年には薬物依存症で治療を受けた10代患者のうち、主たる薬物が市販薬だった人の割合が5割超を占めるようになった。

厚労省は関係団体が参加する検討会で対策を議論している。指定薬の1箱あたりの容量をごく少量に制限する案や、店頭での対面販売と、映像・音声を使ったオンライン販売だけに流通方法を規制する案が検討されている。

現在、医師の処方箋がいらない市販薬は薬剤師や登録販売者による説明をメールのやりとりで確認すればネットで購入できる。この案が実現すると薬を遠隔で入手したい人は薬剤師らの予約をとり、音声と映像を使った説明をリアルタイムで聞く必要が出てくる。

既存のネット販売店はシステム対応が必要になり、人材面の制約も生じるので、指定薬の取り扱いをやめる店舗が続出する可能性が指摘されている。薬を適正に使用する大多数の人の利便性が低下することになりかねない。

そもそもネット販売を禁止しても、乱用を防ぐ効果は限定的だ。若者は複数のドラッグストアを回って薬を買い集めることも多いためだ。大量購入する人に値引きするなど不適切な販売を行うドラッグストアも確認されている。

薬の買い回りを防ぐにはデジタル技術の活用こそが必要だ。乱用の恐れがある薬を購入する人にマイナンバーの提示を求めて購入記録を蓄積する。薬剤師らは自店か他店かに関係なく購入履歴を確認できるようになり、乱用が疑われる人には販売を見送り、医師の受診を促すことができる。

安易なネット排除ではなく、薬へのアクセスと安全の両面に配慮した対策を練ってほしい。