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[社説]中国・中東発のリスクに結束して備えよ


 
#経済 #経済 #社説
2023/10/12 2:00
 
中国の不動産問題が深刻になれば世界の成長率を下押しする(北京市内の建設現場、8月)=共同
多くの国がインフレ鎮圧にてこずるなか、成長率は低空飛行が続く。そこに中国経済のさらなる低迷や中東での地政学上の危機といった下振れリスクが重くのしかかる。国際通貨基金IMF)が公表した最新の見通しは、世界経済のそんな姿を浮き彫りにした。

世界の分断が深まり、政策協調の機運が後退している点は気がかりだ。各国はインフレとの闘いや成長を底上げする努力とともに、経済失速の懸念に対処するためにも結束すべきだ。

2023年の世界の成長率は3.0%と7月の前回予測から変わらなかったが、24年は0.1ポイント引き下げ、2.9%と見込んだ。

22年の3.5%から減速し、新型コロナウイルス禍前の00〜19年の平均の3.8%を下回る。ゲオルギエバ専務理事は世界経済の回復力が「極めて弱い」と認めた。

注意すべきなのは、各国間の成長格差が目立ってきたことだ。

米国は設備投資や個人消費が堅調で23〜24年の成長率が0.3〜0.5ポイントの幅で引き上げられた。半面、経済停滞にあえぐドイツは0.2〜0.4ポイントの下方修正となり、23年は0.5%のマイナス成長に陥る見通しとなった。

世界経済にとって大きな懸念材料が中国だ。不動産部門の調整圧力が響き、成長率の予想は前回から0.2〜0.3ポイント下振れした。とくに24年は4.2%にとどまり、世界経済の足を引っ張る。

IMFは不動産の調整が深まった場合、25年の中国の国内総生産GDP)が最大1.6%減り、世界の成長率を0.6%分押し下げると試算する。中国当局は世界経済の失速を回避するためにも、景気刺激と構造改革を両立させる取り組みを急ぐべきだ。

地政学ショックのもと、国際商品市況が不安定になる懸念も指摘した。現実に、パレスチナイスラム組織ハマスイスラエルに侵入して大規模な攻撃を仕掛けたのに対し、イスラエルが報復に動き、中東情勢が緊迫している。

すでに原油高が再燃し、インフレ進行や市場の混乱を通じて経済に下押し圧力がかかる懸念も無視できない。軍事衝突に歯止めをかけるための国際協調が問われる。

日本は今回、23年の成長率が0.6ポイントと大きく上方修正されたが、24年の減速予想は変わらなかった。内需主導の経済回復を確かなものにするためにも、海外発のリスクへの注意は怠れない。