バンブーズブログ

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中国経済の再生に向けた道筋について

[社説]中国経済の再生に向けた道筋が見えない
 
 
#習政権 #社説
2024/3/6 2:00

中国経済の司令塔であるはずの首相から、政策の意図やねらいを聞く機会がなくなる。これでは苦境が続く中国経済の先行きに不安を覚えずにいられない。

中国政府は5日に始まった全国人民代表大会全人代、国会に相当)が11日に閉幕したあとに、李強首相の記者会見を開かないと発表した。

唐突な「通告」に驚きを禁じえない。全人代にあわせて毎年開いてきた首相の記者会見は、国内外のメディアが中国共産党の最高指導部メンバーから生の声を聞く数少ない機会だった。

全人代の報道官は「特別な事情がなければ今後数年、首相会見はない」としており、このまま廃止になる可能性が高い。習近平国家主席への権力集中が進み、情報統制を強める今の中国を象徴する動きといえる。

李首相は政府活動報告で、2024年の経済成長率の目標を実質で「5%前後」に置いた。前年と同じ水準である。

23年の成長率は前年比で5.2%となり、目標を達成した。一方で、不動産不況や地方政府の債務問題は改善の兆しがない。国際通貨基金IMF)は24年の成長率を4.6%と見込む。李首相も政府活動報告で今年の目標達成は「容易でない」とした。

景気がふるわない根っこにあるのは需要不足だ。本格的なデフレを防ぐためにも、財政による下支えは欠かせない。

地方政府が発行するインフラ債の枠を23年より1千億元(約2兆1千億円)多い3兆9千億元としたり、今年から新たに超長期特別国債を出したりする刺激策は、短期的に景気を押し上げる効果が期待できる。

ただ、国内総生産GDP)の3割を占めるといわれる不動産業をどう立て直すのか。地方債務の問題をどう解決するのか。政府活動報告から、そうした疑問への答えは読み取れなかった。

李首相には政策立案の責任者として、自らの言葉で国の内外に説明する義務があるはずだ。それができないとすれば、一人に権力が集まる統治のあり方に問題があるといわざるを得ない。

海外から中国への直接投資は23年に330億ドル(約5兆円)の流入超にとどまり、前の年より8割減った。だれがどこで政策を決めているのか。それがみえない習政権に対する不信の表れでもある。