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[社説]岸田文雄首相は果敢な政策実行で信頼の回復


 
#社説 #オピニオン
2023/10/24 2:00
 
衆参2補選の結果を受け、記者団の取材に答える岸田首相(23日午前、首相官邸
岸田文雄首相が国会で所信表明演説に臨み、「物価高をはじめ国民が直面する課題に必ず答えを出す」と訴えた。発足から2年が過ぎた政権運営は停滞感が強まっている。場当たり的な対策の繰り返しではなく、骨太な政策の実現によって有権者の信頼を取り戻すのが王道といえる。

首相は演説で「経済、経済、経済。私は何よりも経済に重点を置いていく」と強調した。これまで防衛力強化やエネルギー政策の見直しに取り組んできたものの、物価高対策など生活に身近なテーマで有権者の不満が高まっている現状を意識した表現が目立った。

首相は今後の優先課題として「『低物価・低賃金・低成長のコストカット型経済』から『持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済』への変革」を掲げた。3年程度を変革期間とし、「供給力の強化」と「国民への還元」を車の両輪と位置づける。

半導体や脱炭素のように国の競争力や安全保障を左右する戦略分野を重点的に強化する意味は大きい。首相は賃上げや設備投資、研究開発を後押しする減税措置と補助制度の拡充に意欲を示した。

一方で急激な物価高を踏まえた経済対策として「税収の増収分の一部を還元し、国民の負担を緩和する」との方向を打ち出したのは大いに疑問である。

コロナ禍による国内の需要不足は解消しつつあり、防衛費増額や少子化対策の安定財源の確保も課題だ。時限的な所得税減税を検討するというが、バラマキ色の濃い大規模減税は歳出構造を健全化していく流れに逆行する。

22日に投開票された衆参2つの補欠選挙自民党は1勝1敗だった。保守地盤の地域だったにもかかわらず、自民党候補は衆院長崎4区で小差の勝利、参院徳島・高知選挙区は大敗に終わった。

今回の厳しい結果は、岸田政権の現状への有権者の失望感と不満の高まりを映したといえる。

岸田政権は「新しい資本主義」を掲げ、新規産業の成長を阻む規制の見直しや投資促進、人材の有効活用を目指している。行政や子育て、教育、介護の現場でのデジタル技術の活用も重視するが、成果は十分に上がっていない。

小手先の減税や給付措置で有権者の支持は回復しない。首相は難しい課題にも果敢に取り組み、結果を出すことで国民の負託に応えていってもらいたい。