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2023/11/4 19:05
次の米大統領選で民主党のバイデン大統領(写真㊧)に挑む共和党ではトランプ前大統領を軸に候補選びが進む=AP
米大統領選の投開票まで1年となった。世界経済や安全保障に多大な影響を及ぼすだけに、国際社会の注目が集まる。どんな結果になるのかは予断を許さないが、同盟国の日本は米国とあらゆるレベルで緊密な関係をつくって備えておくのが重要だ。
再選をめざす民主党のバイデン大統領は就任後、新型コロナウイルスへの対処に取り組み、外交は国際協調路線に回帰した。足元の経済は日欧と比べて堅調に推移する。ウクライナ支援で日米欧の連携を引っ張った点も評価できる。
もっとも、バイデン氏がよって立つ基盤は極めて脆弱だ。その一因は米国の分断修復が進んでいないことにある。
激しい党派対立のあおりで米議会での連邦政府予算の協議は難航している。今月半ばまでに決着しなければ政府機関が一部閉鎖に追い込まれ、幅広い分野の業務に支障を来しかねない。ウクライナ支援の継続には暗雲が漂う。戦渦が広がる中東でも従来の親イスラエル路線が国内外で批判を招き、難しいかじ取りを迫られている。
近年でいまほど米国の強い指導力が求められているときはない。重要政策では党派の壁を越えた協力を民主党はもちろん、野党・共和党にも引き続き期待する。
共和党の候補選びは世論調査で首位のトランプ前大統領を中心に民主党との対立をあおる言辞が目立つ。経済格差の縮小など分断の解消に向けた努力や、民主主義国のリーダーとしての役割といった骨太の議論をもっと聞きたい。
共和党が全米の各州で不正防止を名目に投票権を制限する法律を相次いで制定しているのも気がかりだ。民主党を支持する傾向が強いマイノリティー(少数派)の投票機会を奪うとの指摘がある。
再選されれば2期目の終わりに86歳となるバイデン氏は高齢批判がくすぶる。民主党の指名争いから撤退し無所属での出馬を表明したロバート・ケネディ・ジュニア氏が第三極の候補として票を集めれば、結果を左右しうる。
日本は誰が大統領に就こうとも米国との絆を密にすることが大事だ。日米同盟の土台を支える事務方を含むあらゆるルートで強い関係を築き、欧州やオーストラリアをはじめとする同志国との関係も深める。多面的で重層的な外交が日本の経済や安保の強度を高める。防衛力強化を含む自助努力も欠かせない。