バンブーズブログ

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[社説]日大の統治不全は深刻だ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/11/4 19:00
 
日本大学アメリカンフットボール部を巡る違法薬物事件について記者会見する第三者委員会の綿引万里子委員長(10月31日、東京都千代田区
ガバナンス機能の不全を理由に、90億円規模の国の私学助成が3年連続で全額不交付になった。異常な事態である。

日本大学アメリカンフットボール部員による違法薬物事件を巡る大学側の対応を検証してきた第三者委員会が報告書を公表した。「事実を矮小(わいしょう)化し不都合な情報に目をつぶり、自己を正当化した」と指摘。法令順守の欠如を厳しく批判した。

競技スポーツを所管するのは教育部門を統括する学長、副学長らだ。彼らは経営を担う理事会のメンバーでもある。両組織の役割分担が不明確で、連携やチェック機能が働かない点に問題がある。

事件への対応を主導した元検事の副学長は、大麻の可能性が高い植物片を見つけながら大学本部で保管を続けた。警察への連絡や理事会での情報共有が遅れた失態について第三者委員会は、「証拠隠滅や大麻所持罪の疑惑を持たれることとなれば、社会からの批判や不信は単なる学生の違法行為の比ではない」と結論づけた。

日大は、危険タックル問題や元理事長の脱税事件などの不祥事が相次いだ。経営トップが独裁的に振る舞い、自浄作用を発揮できなかった。卒業生で作家の林真理子氏を理事長に迎え、解体的出直しを誓ったはずだ。

新体制でも、風通しの悪さが続いている。危機管理の要諦は、情報の共有である。教育部門の不祥事などが理事会に迅速に報告されなければ、健全な統治が成り立つ道理がない。

卒業生に限らず、大学経営に精通した外部の識者をさらに登用するなど、改革の姿勢を社会に示す責務がある。

統治機能の欠如の被害者は、違法行為に手を染めていない大学や付属校などに在籍する学生や生徒たちであろう。日大は、私学助成の不交付を理由にした学費の値上げはしない、と表明しているが、度重なる不祥事の責任は重い。

人事の刷新などで、早急にけじめをつけるべきだ。