バンブーズブログ

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[社説]「核なき世界」実現へ手を尽くせ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/12/9 2:00
 
岸田首相(左から3人目)は広島サミットでG7首脳を平和記念公園に招いた
核兵器のない世界」の実現に向けた方策を有識者が話し合う「国際賢人会議」が被爆地の長崎で始まった。停滞している核軍縮の機運を再び高め、進展を後押しするよう期待する。

唯一の戦争被爆国である日本は核軍縮の議論を主導する責務がある。今回の会議も含めてあらゆる手段を講じる努力をすべきだが、いまの政府の取り組みが十分なのか、疑問が残る。

賢人会議は岸田文雄首相の肝煎りで昨年始まり、今回で3回目だ。15人の委員は核拡散防止条約(NPT)が核保有を認める米国と英国、フランス、中国、ロシアに加え、インドネシアやヨルダンなど非核保有国で構成する。首相も出席し、2026年に予定する次のNPT再検討会議への提言の策定に乗り出す。

今年の主要7カ国(G7)議長を務める首相は5月の首脳会議でG7首脳を被爆地の広島に招いた。賢人会議のように地道な取り組みも交えながら、国際世論の喚起に努めた姿勢は評価する。

首相は核保有国と非核保有国を橋渡ししたいと意気込む。そうであるなら、先週開かれた核兵器禁止条約の締約国会議に日本が参加しなかったのは理解しがたい。

あらゆる核開発や使用を禁じる同条約には60カ国・地域以上が加盟する。北大西洋条約機構NATO)で米国の「核の傘」に守られるドイツやベルギーなどは非加盟ながら、オブザーバーとして締約国会議に出席した。

日本も非加盟だ。首相はその理由について、条約に核保有国が加盟しておらず、実効性に欠ける点を挙げる。それでも、国際世論を動かすためにはオブザーバー参加も含めて可能な限り手を尽くすべきではないか。

日本は核廃絶をめざす国連決議の採択をはじめ、核軍縮の議論をけん引してきた実績がある。締約国会議は核実験の被害者救済や環境対策をとる基金の設立も協議している。こうした分野は日本の知見が生かせるはずだ。