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2023/12/30 2:00
台湾総統選の3候補(左から頼清徳氏、侯友宜氏、柯文哲氏)=ロイター
民主的な選挙を自らに都合よく操ろうとする行為は断じて許されない。中国の習近平政権は大詰めを迎えた台湾総統選への介入をやめるべきだ。
中国政府は台湾製の一部輸入品に適用している関税の優遇措置を、2024年1月1日から停止する。繊維の原料となる化学製品など12品目が対象だ。
1月13日の台湾総統選が約3週間後に迫ったタイミングでの発表だった。対中強硬路線を取る与党の民主進歩党(民進党)に、経済で圧力をかけるねらいは明らかだ。中国側は対象品目をさらに増やす可能性も示唆する。
選挙戦は民進党の頼清徳副総統を、最大野党である国民党の侯友宜・新北市長が激しく追い上げる。第3政党・台湾民衆党の柯文哲主席は支持を伸ばせずにおり、事実上、頼氏と侯氏の一騎打ちになっている。
現職の蔡英文総統の路線を引き継ぐ頼氏は「一つの中国」を認めていない。習政権は頼氏の当選を何としても阻止したい考えだ。投票日を目前にした関税優遇の停止には、民進党の支持者に揺さぶりをかける思惑が透ける。
一方で、中国との融和路線を掲げる国民党を支援する姿勢は隠そうとしない。
中国政府は12月下旬に台湾産の高級魚「ハタ」の輸入を再開した。22年6月から禁止薬品の検出などを理由に輸入を止めてきたが、国民党からの要望を踏まえて解禁したと説明している。
ムチとアメを使ったあからさまな選挙介入である。
中国はこれまで、軍事的な緊張を高めて台湾の選挙に干渉してきた。偽情報の拡散にも絡んでいるとされる。経済的な圧力を強めるのは、台湾の世論が思うようにならない焦りの裏返しと取れる。
そもそも、民意は操れるという考え自体が間違いだ。習政権はそれに早く気づくべきである。
台湾住民は中国の介入に動じず、冷静な判断で民主主義の底力を示してもらいたい。