バンブーズブログ

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[社説]官民一体のウクライナ復興支援を息長く


 
 
#社説 #オピニオン
2024/2/20 19:05
 
岸田文雄首相はウクライナのシュミハリ首相に長期の復興支援を約束した(19日、首相官邸
日本とウクライナ両政府が経済復興推進会議を都内で開き、日本が長期的な支援をウクライナに約束した。米欧に「支援疲れ」が広がるなかで、日本が率先して復興を後押しする姿勢を打ち出した意義は大きい。

まもなく丸2年を迎えるロシアの侵攻をまず早急に終わらせるべきなのは言うまでもない。ウクライナの復興は官民が手を携えて息長く取り組む必要がある。今回の会議をその契機としたい。

岸田文雄首相は基調講演で「日本ならではの貢献を進める」と話した。日本は法的制約があり、米欧のように戦車やミサイルといった殺傷能力のある武器はウクライナに提供できない。復興支援では震災対応や政府開発援助(ODA)で培ってきたがれき処理や地雷除去など日本の強みを生かせる。

会議には日本からおよそ80社、ウクライナは50社ほどの民間企業が参加し、両政府を交えて個別の協力分野を記した56本の文書を交わした。住友商事やクボタ、楽天グループなどがウクライナの主要産業である農業やインフラ、通信分野を軸に復興を後押しする。

この先10年で復興に必要な支援額は72兆円にのぼるとの試算がある。これだけの費用を政府や公的機関だけでまかなうのは現実的ではなく、民間の協力が不可欠だ。ウクライナは豊富なデジタル人材を抱え、その潜在力は大きい。日本企業にはウクライナの経済再生を自らの成長につなげるチャンスを生かしてもらいたい。

民間投資を促す新しい租税条約の締結や日本貿易振興機構ジェトロ)のキーウ(キエフ)事務所設置も決まった。ウクライナには製造拠点の誘致への期待もある。

大事なのは民間企業が安心して長期でビジネスに取り組める環境を整えることだ。ウクライナ復興に関わる企業関係者らを対象に、日本政府がキーウへの渡航制限を一部緩和したのは妥当だ。

ただ、戦闘が続く現地の安全確保には企業の間で不安がなお大きい。安全対策も含め、政府は可能な範囲できめ細かく民間企業の要望に応えてもらいたい。

ウクライナは支援金が適切に使われない汚職がかねて問題視されてきた。日本政府は昨年、主要7カ国(G7)による汚職対策のタスクフォースの設置を主導した。復興支援の透明性を確保するため、他国と連携して着実に対策を進めるべきだ。