バンブーズブログ

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同盟強化の実績を次の10年につなげよ

[社説]同盟強化の実績を次の10年につなげよ
 
 
#社説 #オピニオン
2024/7/1 2:00
 
合同で訓練する海上自衛隊と米国、カナダ、フィリピン海軍の艦艇(6月、南シナ海)=防衛省提供
いまから10年前、政府は集団的自衛権の限定的な行使を可能にするため憲法解釈を見直した。権威主義国家などの暴挙によって国際環境がすこぶる悪化するなかで日米同盟の強化につながった。次の10年に向けた備えが万全かを点検すべきだ。

密接な関係にある他国への武力攻撃を自国への攻撃とみなし反撃する権利が集団的自衛権である。2014年7月1日に閣議決定し、この見解を反映した安全保障関連法が16年3月に施行された。

幸いなことに日本はこれまで一度も使っていない。それでも同盟国である米国の世界への影響力が弱まっており、万が一の事態も想定した安保を固める必要がある。

同法に基づき、平時に米軍などの艦船・航空機を守る「武器等防護」の任務が自衛隊に加わった。23年までの実施件数は計137件。地域の安定へともに汗を流すことで同盟関係の双務性を高める効果を持つ。米国との信頼関係が高まったと日本政府はみている。

米国との防衛協力をめぐる議論は、かつては戦争に「巻き込まれる恐怖」が主流だったが、最近は「見捨てられる恐怖」が語られる。中国や北朝鮮の軍事的脅威にさらされる日本にとって、米国をいかにこの地域につなぎ留められるかは死活問題になりうる。

集団的自衛権は、日本の存立が脅かされ、国民の生命や自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に限り、行使を認める。「日本の存立が脅かされる」「明白な危険」の解釈は定かでない。米国がサイバー空間や宇宙で攻撃を受けた場合の対応などあいまいな部分も残る。

7月1日は自衛隊の創設から70年の節目でもある。冷戦のさなかに生まれた自衛隊の任務は多様化し活動領域も広がった。これまでの取り組みを検証し、国内外で果たすべき役割をめぐる国民的な議論を高める契機としたい。

武力による台湾統一を辞さない中国や、反米の枢軸づくりに動くロシアに対抗する国々を増やすことがこの地域の平和と安定に導く。韓国、オーストラリア、インド、東南アジアなどのほか、アジアへの関心を高める欧州勢も引き込んで安保の裾野を広げたい。

安保の強化には国民への丁寧な説明と理解が欠かせない。集団的自衛権の行使に至らない抑止力と、問題解決に向けた外交努力が大事なのは言うまでもない。