バンブーズブログ

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「選挙公営」を考える機会に

[社説]「選挙公営」を考える機会に
 
 
#社説 #オピニオン
2024/7/2 19:00
 
同一のポスターが多数張られた都知事選の掲示板(6月25日、東京都新宿区)=一部画像処理しています
東京都知事選で選挙ポスターのあり方などが問題になっている。選挙での売名行為は昔からあったが、動画配信を使うなどして、収益を上げる目的で組織的にかつ大規模に行われるようになったのはゆゆしき事態だ。

我が国の選挙は立候補の機会をできるだけ多くの人に開くため、選挙運動の費用をある程度、公費で負担する「選挙公営」を基本としている。公費を使って売名し利益を得る行為は看過できない。これをどう防ぐべきか。表現の自由や選挙公営のあり方を含めて考える機会にしたい。

選挙公営は普通選挙とともに導入された。資産の多寡によらず幅広い層が立候補できるようにする目的だ。同時に公費以外の選挙運動に規制を加え、金権選挙を抑える狙いもあった。これは戦後の公職選挙法に引き継がれた。

論点の一つは立候補の機会を確保するとしつつ、やみくもな出馬の歯止めになるよう諸外国に比べて高額な供託金を設けていることだ。供託金は選挙公営の費用を賄う意味もあるが、立候補の自由を妨げるとの批判がある。

一方で、公費を使った売名で稼ぐ行為を防ぐには、供託金の引き上げなど規制を強化すべきだとの声もある。これはどこまで公費で負担するか、選挙公営のあり方と併せて考えるべきだろう。

選挙公営は歴史的に選挙運動規制と表裏一体である。箸の上げ下げまで口を出すといわれる今の公選法の厳しい選挙運動規制は、有権者を選挙から遠ざけているとの指摘もある。SNSの活用も含めて選挙を身近にする観点からも、選挙公営と選挙運動規制のあり方を再考してよい時期でないか。

私たちは選挙期間中に特定の陣営を批判することは、有権者の投票行動に影響を与えかねないとして控えてきた。だが、今回の動きは選挙への信頼を損ない、投票率の低下を招く懸念がある事態だと考える。公平な選挙報道とともに、選挙の信頼性を守るために必要な主張はしていきたい。