バンブーズブログ

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[社説]袴田さん再審は迅速な決着を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/10/29 2:00
 
袴田巌さんの再審初公判で検察側はなお有罪を主張した(27日、静岡地裁)=代表撮影
1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、再審が決まった袴田巌さんの公判が静岡地裁で始まった。

事件発生から57年。東京高裁の再審開始決定からも7カ月以上過ぎた。87歳という袴田さんの年齢を考えれば、一刻も早い決着を最優先すべきだ。

27日に開かれた初公判には袴田さんに代わって姉のひで子さんが出廷し、「巌に真の自由を与えるようお願いします」と無罪判決を求めた。一方、検察側は冒頭陳述で有罪だと主張した。

争点は犯行時の着衣とされた衣服の血痕にほぼ絞られている。長期間みそに漬けられた血痕に赤みが残るかどうかである。今後の公判では、専門家の証人尋問などが行われる見通しだ。

弁護団によると、当初は2024年3月中の結審を想定していたが、4月以降にずれ込む可能性があるという。

そもそも血痕については再審請求審で時間をかけて審理されてきたはずだ。「有罪立証」が法的に認められているとはいえ、同じ議論の蒸し返しで決着が遅れるとすれば「検察がいたずらに引き延ばしている」との批判は免れない。裁判所の訴訟指揮も問われる。

刑事訴訟法は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」が見つかったときに再審を開始すると規定する。戦後、死刑確定後に再審が認められた4件はすべて無罪になった。今回も同じ結果になる公算が大きい。

執行の恐怖におびえながら人生の大半を過ごした袴田さんの境遇を考えたとき、これ以上の遅滞は重大な人権侵害だ。刑事司法に対する信頼が揺らぎかねない。

事件をめぐっては東京高裁が「捜査機関による証拠捏造(ねつぞう)の可能性」を指摘した。有罪立証の背景に検察や警察のメンツがあるとの疑念が拭えない。

だとすれば本末転倒であろう。捏造が潔白だと証明したければ、自ら経緯を検証して結果を公表すべきではないか。