バンブーズブログ

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クマ被害の対策 住み分けが大事

[社説]クマ被害防止へすみ分けを
 
 
#社説 #オピニオン
2023/11/2 2:00
 
秋田県で目撃されたツキノワグマ(2019年、米田一彦さん撮影)=共同
クマの被害が深刻だ。環境省によると、4月から10月末までの被害者は過去最悪の計180人(暫定値)だった。亡くなった人も5人いる。

被害を防ぐには人間とクマが適切な距離を保ち、すみ分けられる環境づくりが重要だ。お互いが共存し続けるため知恵を絞りたい。

今年はエサとなる木の実が凶作で、東北を中心に自治体が警報を出している。紅葉シーズンを迎え、山に入る人も多い。出没情報などに注意し、警戒を怠らないようにしたい。アウトドアレジャーを楽しむ訪日客や山間部で働く外国人もいる。日本語以外で注意喚起する仕組みが必要だ。

クマは本来11〜12月ごろから冬ごもりに入り、被害は減っていく。しかし温暖化の影響で冬眠時期が遅くなっているとの指摘もある。油断は禁物だ。

懸念されるのは、生息域が広がっているとみられることである。市街地に出没し、人間を恐れない「アーバンベア」と呼ばれる個体が増えているという。

屋外に生ごみや収穫しなかった果樹を放置しない。クマが姿を隠せるような高い草木を刈る。こうした人里に近づけさせない対策を徹底することで、不幸な遭遇を減らすことができる。

被害が深刻化した背景として、中山間地域の過疎化や農林業の衰退がある。里山に人の手が入らなくなり、クマと人間を隔ててきた「緩衝地帯」が失われていると専門家は口をそろえる。こうしたエリアをいかに管理するか。行政と地域住民が一体となった、中長期的な取り組みが求められよう。

高齢化によるハンターの減少などで、駆除が難しくなっている状況もある。秋田県は狩猟者に慰労金などを支給する方針を決めた。国も自治体への緊急支援に乗り出すという。

駆除だけでなく、生息数や生態についての調査・研究も進めねばならない。クマを含む野生動物の管理と保護について、適切なバランスを探りたい。