バンブーズブログ

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中小の労務費の転嫁を進めよ

社説]中小の労務費の転嫁を進めよ
 
 
#社説 #オピニオン
2024/1/14 2:00
 
運輸業では労務費などの価格転嫁が遅れている
賃金と物価の好循環を持続させるうえで、雇用の約7割を支える中小企業の賃上げは極めて重要になる。賃上げ原資の確保には、労務費などのコスト増加分の適正な価格転嫁が欠かせない。大企業は取引慣行を見直し、中小の賃上げを後押しすべきだ。

日銀が11日に公表した1月の地域経済報告では、今年の賃上げに慎重な中小企業も目立つ。大手ほどは収益改善が進んでいないからだ。価格転嫁の難しさを訴える声も企業から複数上がった。

日本商工会議所の昨年10月調査によると、労務費を価格に全く転嫁できていない企業が26.7%あった。増加分の1〜3割程度の転嫁にとどまる企業も32.7%にのぼる。原材料費の価格転嫁は進みつつあるが、労務費は自助努力での吸収を求められる例が多い。

公正取引委員会は昨年11月、労務費を取引価格に適切に転嫁するための指針を発表した。発注側は現場任せにせず、経営トップが価格転嫁の受け入れ方針を決めるべきだとした。毎年1回など定期的に協議する場を設け、最低賃金の上昇率や春季労使交渉の妥結額などを参考とするよう促す。

もともと中小企業は交渉力が弱く、発注側の担当者は自社の利益を追求するあまり値上げ要求を拒みがちだ。経営者の関与を明確に求めたことは意義がある。

デフレ経済から完全に脱し、ビジネスの持続性を保つには適正な取引が欠かせない。経団連など経済団体は各社に対応を呼びかける必要がある。連合をはじめ、大企業の労働組合も経営側に指針の順守を働きかけてほしい。公取委も周知徹底を急ぎ、監視体制を強めてもらいたい。

中小企業が賃上げを継続するには、経営基盤を強くするための自助努力がもちろん不可欠だ。デジタル技術で業務の効率化を急ぎ、新分野の開拓などで収益力を高める必要がある。助成金のばらまきは自力での成長を遅らせかねない。政府は生産性向上の支援などに施策を絞るべきだ。