バンブーズブログ

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自由を奪われた香港

[社説]自由を奪われた香港の将来を憂慮する
 
 
#社説 #オピニオン #習政権
2024/3/23 2:00
 
香港の立法会は2週間足らずの審議で国家安全条例を可決した=AP
香港から、あらゆる自由を奪い取らなければ気が済まないのだろうか。中国の習近平政権が統制を強める香港の将来を、案じずにいられない。

香港の立法会(議会)がわずか2週間足らずの審議で国家安全条例を可決した。

スパイ行為や国家への反逆、反乱の扇動、外国勢力の干渉などを取り締まりの対象にする。最も重い罪には終身刑を科す。

学生らの大規模な抗議活動を受け、習政権は2020年6月に香港国家安全維持法(国安法)を制定した。新条例はそれを補い、抜け穴をふさぐのがねらいだ。習政権による強権的な香港の統治体制が完成する。

新条例が定める犯罪行為の定義はあいまいで、いくらでも拡大解釈できるように読める。

たとえば「扇動の意図を伴う行為」で「意図」があったかどうかを判断するのは当局だ。平和的な抗議活動を呼びかけるだけでも、当局が国家の安全を脅かす意図があったと決めつければ、罪を着せられるおそれがある。

外国人や外資系企業も無関係ではいられない。

国安法は「外国勢力との結託」を取り締まりの対象としてきた。新条例は国外からの「干渉」を犯罪と明記している。これまで以上に外国の個人や組織を摘発しやすくなるとの見方は多い。

香港でスパイの疑いをかけられるリスクも高まる。

中国本土では、23年3月にアステラス製薬の日本人社員がスパイ容疑で拘束された。当局は社員がどんな罪を犯したのかをいっさい明らかにしていない。

香港の新条例も何がスパイ行為かははっきり示しておらず、中国本土と同じように外国人の拘束が増えるとの懸念はぬぐえない。すでに一部の研究者やビジネスパーソンの間では、香港訪問を控える動きが出ている。

言論や報道の自由があったからこそ、香港は世界中から優秀な人材をひき付け、国際金融センターの地位を確立してきた。

その香港に未来はないと感じ、海外に移住する人が後を絶たない。シンガポールなどに拠点を移す外資系企業も目に付く。

それは習政権への不信の表れにほかならない。香港だけではない。中国本土からも人やカネが離れている。習政権は深刻に受け止めるべきだ。